コロナ禍の下、いろいろありまして

この頃めっきり、とくれば時候の挨拶になりそうなものですが、どっこいそうじゃないんです。コロナ禍の下でこの頃めっきり上演の機会がなくなりました。なのに、でも、上演回数が増えております。
どういうこっちゃ?とお思いでしょうね、みなさん!ふざけているんじゃないんです、ほんとなんです。今までは1回で済んだものが、感染予防のために40人づつ3回に分けて、といった具合に1ステージのギャラで3回、労働の機会が増えたのです。疲労度は増すばかり・・・でも、これが結構ありがたいことでもあったのです。
昨年入団した新人(20代、奇特な人たち、宝物)の二人と私(80代半ば、ポンコツ、年代物)の三人だけで、⦅厳しい制限時間》と《超狭いスペース》と《面皰とマスクとフェイスシールド》を取り換え取り換え、3ステージ上演に挑んだのです。同業者じゃないとわからないと思いますが、人形劇のケコミの中は狭いうえにセットの足が林立していてその中をさも気楽そうに歌いながら、中腰で駆け回るのはアルペンスキーのような身のこなしが要ります。たっぷり稽古してきたとはいえこの季節この異常気温の中での作業だから何か一つでも狂えば・・・心音バクバク無我夢中・・・なむあみだぶつ・・・客頼み。
演し物は『トロトロとがぁが』・『ポエムポエム』に『オープニングショー』劇団創立以来50年の永きにわたって続いているポポロの代表作、新人の登竜門的な舞台です。
上演前、主催者との打ち合わせは舞台監督を受け持ったT君、大きな身体が少し反身になってしっかりと喋っているものの、ちょっと声が相手に聴き取れなかったりして額はすでに汗ばんで・・・、助太刀上手のS女はチラ見しながら意外に無口、緊張が伝わってくる感じ。
年配者の私は口をはさむ余裕もない、狭い客席の隅っこに身を細らせるようにライトスタンドを立て、電源を引き、コードを伸ばし、それらをみんな危なくないように養生テープで固定し、時間を心配しながら明かりを合わせ、先生がたの質問に答え・・・ああもう時間がないと慌てる心を抑えつつ準備状況を点検しながら舞台衣装へ着替えに入る。打ち合わせを終えたT君が、袖幕の裏にきて「フーッ」大きな大きな吐息をつき「打ち合わせ終わりました」。「ああ、ご苦労様」と声をかける暇もなく園長先生のあいさつが始まった、緊急事態に突入だ閑話休題、おっと客入れのBGMをアウトして開演準備ィ・・・いよいよだぁ!・・・こうして目まぐるしくもあっという間の3ステージ上演の幕が切って落とされた。
第1回目のステージが無事に終わってほっと一息、汗を拭こうとタオルに手を伸ばした時、ガヤガヤ ガヤガヤ・・・もう2回目の子どもたちが入ってきた。「わっ準備準備ィ・・・」
子どもたちは待ちかねていた。みんなで人形劇を見るのを、もう百年近く・・・それほどでもないけどずぅーっとこの日を待っていた、腹の底から笑うのを溜めて溜めてため込んで。
玉が弾んでワーッ、虫が躍ってヒャーッ、五つの風船が付いたセンターポールが上がってくるとキャーッ、司会人形のポポロおじさんが飛び出したらダハハハハころげて崩れた。
 待っていてくれたんだね、人間のポポロおじさんもうれしくて大はしゃぎ・・・待って!ホラ制限時間がにらんでる。
 そんなこんなであたふたと無事に3ステージやり終えてカーテンコールでケコミの表に出たものの、「しまった、フェイスシールドつけるの忘れた」仕方がないのでハリネズミとがちょうのがぁがで顔隠し「みなさん、どうもありがとう」内気なおじいさんでありました。
 おかげ様で〔芝居は客と一緒に作るもの〕それがようく分かった三人、お互いが頼みの綱で事故なく悔いなく最後までやり通せた・・・涼しい風が吹き抜けて、肩の荷そっとおろしました・・・と思ったら、窓を開けたのは先生方で「ここは子どもたちのお昼寝場所なのですぐにかたずけまぁす」まだまだ終わりは遠かった。
 帰りの車の中はもう若い二人が大はしゃぎ、S女いわく「ぜったい何か起こると思っていたのにさあ」「何が起こるって?」後部座席でぐったり荷物に埋もれながら尋ねると「セットが倒れるとか、音が出ないとか・・・」「子どもたちがあんなに答えてくれるなんてびっくりだったしね」運転中のT君は珍しく何やら口ずさみながら話に割り込んで、ついにはラップを二人で聞き始め、それを子守歌にして私は眠り込んだ。それは昼飯前の2時頃だったかなあ・・・・・・。何はともあれ、いい経験になったことは確かだったのです。

さて、疲れ果てて家に帰れば・・・待ってる待ってる、プリキュアと鬼滅の刃とラプンツェルとアナとなんとかかんとかと、すべてまとめて身に纏ったもうすぐ5歳の才女が襲ってきて口早に謎をかけてくる、と思ったら足元から怪獣が這い上がってきた、生後9か月のしたたか者だ。こいつらにつかまったら大変だ、何はともあれ感染対策。うがい手洗い顔洗い、環境に順応するのはしっかり出来ます、まだ大丈夫。
コロナ禍の下で夕食時に新しい慣習が生まれました。「まずじゃんけんだよ」5歳直前の姉ちゃんが命令します。勝った人が大きな声で宣言します。「それではみなさん召し上がれ」「いただきます」保育園モードで始まった夕餉のテーブル、「あっ、忘れてた」「なになになに忘れた?」「乾杯」パパとじっちゃんがビール、ママはノンアルコール飲料、ばっちゃんは健康茶。で、姉ちゃんはというとその日その日でミックスキャロットとかグリーンスムージーとか牛乳とか、ただし用意しておくのが大体じっちゃんの役目。こうしていつも宴会モード。品数は少なくても気分は居酒屋。ああ・・・しばらく居酒屋に行ってないなあ。

というわけで、勉強材料も身の回りにどっさりですからね、ワクチンも打ったし(2回目もよ)気が付いたら90歳までの作品ラインアップができていたのです。フフフ・・・ないしょないしょ、だってみんなのうんざり顔が迫ってくるじゃないの、ホラホラホラ・・・。
それにしても上演ないかなあ、この前の上演で2キロ半痩せたのにもう戻ってきて、歩いても歩いても減らないんだからなあ・・・まあ増えてもいないけどサ。

山 根 宏 章

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16:53 | 公演の様子 | comments (0) | edit | page top↑
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